労災、第三者行為災害、傷病手当金、障害厚生年金、すべてが絡んだ請求
【ご病名】脳脊髄液減少症(50代 女性)
経緯
通勤途中に発生した交通事故後、ケガは労災保険に基づき認定されたが、労災給付は症状固定として終了した。その後、一度職場復帰を試みたが、原因不明の体調不良に悩まされ、複数の病院を受診した結果、傷病名が確定した。その後、同じ傷病名に基づき、傷病手当金を数か月前まで受給していた。職場復帰の見通しが立たず、障害年金の申請を検討した。
結果
障害認定日で障害厚生年金2級決定
労災保険、第三者行為災害、傷病手当金、障害厚生年金といった複数の社会保険制度が複雑に絡み合っている場合、どの制度にどのような手続きをすればよいのか分からず、戸惑っていらっしゃいました。この方の場合も、まず労災保険が適用されていましたが、すでに労災給付の支給が終了していたため、その後の制度調整において労災との併給調整は不要となりました。しかし、後になって障害厚生年金が遡って支給決定されたことで、過去数か月分の傷病手当金と障害年金の受給期間が重複していることが判明。その重複分については、健康保険組合に傷病手当金の返還手続きを行うこととなりました。とはいえ、最終的にはまとまった年金額が一括で支給され、「これで安心して療養しながら職場復帰に向けた準備ができる」と、安心されたご様子でした。
ポイント
労災給付と障害厚生年金は併給が可能ですが、その場合は障害厚生年金が満額支給され、労災保険(労災給付)の方が一部減額されます。また、傷病手当金と障害厚生年金については、同一の傷病が原因である場合、両方を同時に受け取ることはできません。この場合、まず障害厚生年金が優先して支給され、傷病手当金の金額の方が多い場合には、差額分のみが健康保険から支給される仕組みです。
このように、公的給付制度の併給ルールは非常に複雑で、誤解しやすい点も多くあります。特に、労災保険・健康保険・年金制度といった異なる制度が関わるケースでは、手続きを誤ると返還が必要になる場合もあるため注意が必要です。こういった複雑な制度の申請を行う場合は、事前に社会保険労務士など専門家に相談し、「どの制度が、どのような条件で、どのように支給されるのか」をあらかじめ把握しておくことをお勧めします。
「この場合はこうしよう」「もしそうなったらこうしよう」と、いくつかの選択肢を持って行動するだけでも、傷病や障害による不安を抱えるなかでの心の負担を、少しでも軽減できるのではないでしょうか。