業務中の交通事故 労災受給中の障害厚生年金請求
【ご病名】脳脊髄液減少症(40代 男性)
経緯
通勤途中に発生した交通事故によるケガは、労災保険に基づいて労災認定されたが、労災給付は症状固定を理由に終了した。その後、一度は職場復帰を試みたものの、原因不明の体調不良に悩まされ、複数の医療機関を受診した結果、ようやく傷病名が確定した。その傷病名に基づいて、健康保険の傷病手当金を数か月前まで受給していたが、現在も職場復帰の見通しが立たない状況であり、障害年金の申請を検討した。
結果
障害認定日で障害厚生年金1級決定
労災保険、第三者行為災害、傷病手当金、障害厚生年金といった複数の社会保険制度が複雑に絡み合っている場合、どの制度に対してどのような手続きをすればよいのか分からず、戸惑っていらっしゃいました。この方の場合も、まず労災保険が適用されていましたが、すでに労災給付の支給が終了していたため、その後の制度調整においては労災との併給調整は不要となりました。しかし、後になって障害厚生年金が遡及して支給決定されたことで、過去数か月分の傷病手当金との受給期間が重複していることが判明しました。この受給重複については、健康保険組合に対して傷病手当金の返還手続きを行うこととなりました。とはいえ、最終的にはまとまった年金額が一括で支給され、「これで安心して療養に専念し、職場復帰に向けた準備ができる」と、安心されたご様子でした。
ポイント
労災給付と障害厚生年金は併給が可能ですが、その場合は障害厚生年金が満額支給され、労災保険(労災給付)の方が一部減額されます。また、傷病手当金と障害厚生年金については、同一の傷病が原因である場合、両方を同時に受給することはできません。この場合、まず障害厚生年金が優先して支給され、傷病手当金の金額が障害年金を上回る場合には、その差額のみが健康保険から支給される仕組みです。
このように、公的給付制度の併給ルールは非常に複雑で、誤解しやすい点が多くあります。特に、労災保険・健康保険・厚生年金といった異なる社会保険制度が関わるケースでは、手続きを誤ると給付金の返還が必要になる可能性もあるため注意が必要です。こういった複雑な社会保障制度の申請や調整を行う際には、社会保険労務士などの専門家に相談することを強くお勧めします。「どの制度が、どのような条件で、どのように支給されるのか」を事前に把握しておくことで、申請ミスやトラブルを未然に防ぐことができます。
「この場合はこうしよう」「もしそうなったらこうしよう」といった選択肢を事前に持って行動することは、傷病や障害による生活の不安を抱える方にとって、精神的な負担を軽減する有効な手段のひとつではないでしょうか。将来に備えた制度の理解や、適切な給付の申請方法を知っておくことで、いざという時の対応に迷わず、安心して生活を送ることができます。