最初の病院の記憶はご本人もほぼない状態 社会的治癒で2級決定
【ご病名】統合失調症(50代 女性)
経緯
20年ほど前、小さな町で悪口を広められたことなどが原因で、気分の落ち込みや強い不安感があらわれ、地元の病院を複数回受診していたが、服薬によって頭がぼんやりする感覚があり、通院を中断した。その後、およそ15年間はまったく医療機関を受診せずに過ごしていたが、再婚相手からのDV(家庭内暴力)により、再び気力が失われ、うつ状態が悪化。自身でも「精神的に異常をきたしている」と感じるようになり、別の精神科を受診した。以後は心身の不調により、内科・婦人科・精神科を転々とするようになり、直近では精神科への入院歴もあった。障害年金の申請を希望され、相談室を通じて弊所へご連絡いただいた。
結果
事後重症で障害基礎年金2級決定
長期間受診していなかった後に最初に訪れた病院で、受診状況等証明書を取得することができました。その証明書には、ご本人様が初診時に「平成×年頃に〇〇クリニックを受診した」と話していた旨が記録されていましたが、ご本人様にはその記憶がほとんど残っていませんでした。当時の診療に関する書類は一切残っておらず、受診時期も正確にはわからない状況でしたが、詳しくお話を伺う中で、それ以降の期間は安定して生活し、就労や子育てにも前向きに取り組まれていたことが明らかとなりました。この経緯を踏まえ、初診日については「社会的治癒」の考え方を用い、再び精神的不調で精神科を受診した日を新たな初診日と主張して事後重症請求を行いました。その結果、障害基礎年金2級の支給が決定しました。相談室の支援員の方からは、「障害年金が決定したことで、今後の自立支援や生活設計の選択肢が広がった」とのお言葉をいただきました。
ポイント
社会的治癒が認められるかどうかは、受診していない期間の生活状況が重要な判断材料となります。この方の場合、「医療機関を受診せず、向精神薬などの服用もなく、生活のために事務職などの仕事に就き、子育てもこなしながら、通常の社会生活を送っていた」ことがポイントでした。単に通院を中断していたという事実だけでは、社会的治癒と認められないこともあります。しかし、「受診していなかった期間をどのように過ごしていたか」や「再受診に至る直前にどのような症状があったか」といった具体的な生活状況や症状の変化を丁寧に記載することで、ケースによっては社会的治癒として認められる可能性があります。